ビワマスの釣り方

                   (文:品川博司)

 

ビワマストローリング中の鱒屋6号

レイクトローリングで使用する仕掛けのシステム

 琵琶湖でビワマスのレイクトローリングを行う際、以下のような仕掛けの種類からいずれかを選択し、釣りをすることになります。

 

・レッドコアラインシステム
・プラナーボード&レッドコアラインシステム
・ダウンリガーシステム
・ダイバーシステム
・ラインにウェイト(オモリ)を付けて沈めるシステム(手軽さはありますが、“同じタナに同じように沈める”という再現性が低く、オススメしておりません)

 

※この章では上記の5種の内、主に現在の琵琶湖で主流となっている「レッドコアラインシステム」・「プラナーボード&レッドコアラインシステム」・「ダウンリガーシステム」について解説してゆきます。


◉レッドコアラインシステム

レッドコアータックルにてビワマストローリング中
オモリ入りのラインを長い距離流すので、電動リールを使用しています(品川の場合)

 

レッドコアライン

 中心に鉛線が入っているのでレッド(lead=鉛。レッドと発音)コア(芯)といいます。糸鉛の外側をダクロン(ポリエステル素材)やPE(ポリエチレン素材)などの糸で編み込んだ、水中で沈んでいくシンキングラインをリール から長く出して流すことでルアーを深ダナまで沈めます。沈下と浮き上がりは、船の速度と流していく糸の長さで決まります。水面近くの表層から、水深28mくらいまでを探ることが可能です。レットコアラインは太さと重さの違いをポンドテストで表示しています。

 伝統的なレッドコアライン(鉛糸の外側をダクロン糸で巻いたもの)を使用したスタンダードなレッドコアラインシステムでは、自船速3㎞前後では、水深15mくらいを流すのが限界でした。ところが近年に発売された新しいPE素材のレッドコアライン(『Sufix 832 ADVANCED LEAD CORE』などの製品)は細く強い糸で水の抵抗が少なくなり、従来の製品の2倍以上沈むものもあり、水深25m以上のタナを狙えるようになったのです。
 市販されているもので、12lb・15lb・18lb・27lbと様々なバージョンが有り、沈下スピードについては同じメーカーの場合は同じとパッケージに表示されていますグデブロッド社には、鉛の入っていないノンレッドのものも有ります)
 一般的に販売されているレッドコアラインは100yd(91m)か、200yd(182m)が基準です。一色(10yd=9.1m)ごとに色分けがされていて、ビワマスでは12lbもしくは18lb表示のものを使用します。船速3kmで走る場合の有効沈下は12色分くらい糸を出す範囲までで、それ以上に糸を出しても沈んでいません。

 

※ 現状でオススメできるレッドコアラインは、上記の「サフィッスクス832」の12lbまたは18lbです。

 
ロッド
 短いほど取り回しが楽ですが、長いロッドの方が竿のタメが有り、ダウンリガーとのコンビネーションで流していくには有利です。
 実際には短くて8.6〜9.6ft、ロングロッドでは12ft。ダウンリガーを併用しない場合や、舟が20ft以上有る場合は10ftが良いと思います。

リール
 ABU7000クラスが良い。ギア比があまり早いものはバレやすいです。また、使えるならシンクロドラグモデルが良いと思います。ラインを100yd以上出すことも多く、頻繁にリールを巻くので、現在は電動リールも使っています。

※ 【リールへのラインの巻き方】
・ナイロンの太めのもので下巻きを20〜30m。バッキングラインとしてPE2号を100m。メインラインとして、PEカバーレッドコア100yd、または18ibノーマルレッドコア100yd。リーダーは、フロロカーボン5号8m。
・PEカバーレッドコアは従来のレッドコアラインに比べ、約2倍の沈下能力が有り、100yd+10mまたは20mで水深20mを狙う事も可能です。
・ノーマルレッドコア100ydで2/0のドジャーを付けたとき、船速3kmで、約9m沈んでいますがバッキングPEを30m出すことで15mまで沈められます。
・リーダーについては、ランディングを考えロッド長の2倍プラスαくらいでいいでしょう。せっかく苦労して沈めたのに、リーダーを長くとりすぎるとルアーを浮かすことになりかねません。

※【レッドコアラインを電動リールに巻く】
 レッドコアラインシステムは長く糸を出すことで水深をかせぐため、魚の取り込み時にはリールをゆっくり均一なスピードで巻き取る必要があります。糸ヨレを防ぎつつ、魚がバレることを避けるためです。以上の理由から、電動リールの使用は合理的といえます。

 

・ダイワの500番代電動リールの場合→太めのダクロンもしくはPEラインによる下巻き+PE1.5号を100m+レッドコアライン100yd(91m)+モノフィラメントライン(ナイロンもしくはフロロ)のリーダーを使用する竿の長さ×2本分+プラスα

 

 

レッドコアラインのメリット

・糸を長く出すことで沈めるため、ルアーが泳ぐ位置が船から遠くなるので、魚に警戒されにくい。

・糸が太いので湖流の抵抗を受けやすく、自然に抵抗の少ないよい流れ=ゆるい流れにルアーが入る。つまり、“流れのヨレ”・“流れのタルミ”・“流れの巻き返し” 等にはエサが集まりやすく、実際にそこに魚が集まっているが、レッドコアラインシステムで流すと自動的に仕掛けをそこに運んでくれる。

 

 

 

プラナーボードを使用する場合のレッドコアラインシステムについて
 “トローリング” において、ルアーは船の直下や後方を流れています。自船が水深の浅い所の魚を警戒させ逃がしてしまうと、水深10〜15mを泳ぐ魚も一緒につられて逃げていってしまうものです。つまり船の通った後ろは魚を散らした場所となり、そこにルアーを通しても釣れる魚はいません。魚がなるべく警戒していない場所を釣る釣り方、それが「プラナーボード」を利用する釣り方です。

 プラナーボードとは、レッドコアラインをなるべく船から遠ざけた位置から流すことができる小さな船のような装置です(極小の板状のものもあります)。低水温期の琵琶湖では表層にエサが泳いでおり、それらを狙うビワマスもいます。表層にいるマスは船が近づくと逃げやすいのでプラナーボードを使い、仕掛けを船から離した状態で流していきます。
 

 プラナーボードには“インラインタイプ”(仕掛けに直接取り付ける)と“アウトラインタイプ”(魚が掛かると道糸をフリーに出来る)の二種があり、アウトラインの方が安定した釣りができるのですが、船を新たに艤装する必要がありますので、ここではより手軽なインラインタイプの説明をします。

 インラインタイプの小さなプラナーボードは本来、ナイロンやフロロカーボン等のモノフィラメントラインの途中に取り付け、ミノープラグ等のルアーを自船の航行線と距離をとって手軽に流す為のものです。レッドコアラインシステムにあえて流用するときの仕掛けとしては、まずはリールに下巻き用のPEラインを100m程度巻き、次にプラナーボードを繋げる部分として5号程度のモノフィラメントラインを20〜25m繋ぎ、次にレッドコアラインを3〜8色分(沈めたい深さの分)カットして繋ぎ、最後に通常通りの仕掛け(リーダー+集魚板+ハリス+ルアー)を繋ぎます。本来の用途で使用するときより負荷が大きいので、インラインプラナーボード本体のバランスを変更する必要があり、また、浮力チューニングも必要です。

 インラインタイププラナーボードの使用を前提としたレッドコアラインシステムは手間のかかるシステムです。しかし、琵琶湖でいわゆる “全層循環” が起きて表層から低層までの全てがビワマスの適水温となり群れが散ってしまい喰いもシブりストライクの頻度が極端に下がる頃、具体的には1月中頃から5月中旬(表水温が10℃を切った状態から15℃に上がるまで)には、特に有効な釣り方なのです。


 

◉ダウンリガーシステム

ビワマスをダウンリガーシステムで狙う品川キャプテン

「ダウンリガー」について

 日本では今まであまり馴染みがなかった “ダウンリガー” とは、大きな重りを水中に入れ、確実に一定の棚に仕掛けを入れておく為の小型のウインチです。深場をコンスタントに狙っていくには、このシステムを導入するのが合理的です。3〜5㎏という重めのオモリを使い仕掛けを強制的に沈めることで、水深30〜40mをコンスタントに狙っていくことも可能になります。

 道具立ても多くて重く、たいそうな物で、30年以上前にも何回か使いましたが、サクラマスやサツキマスを釣るには、レッドコアラインシステムと比べあまりメリットを感じなかったのです。しかしビワマス を狙うとなると事情が変わりました。深いタナでもヒット率の高いビワマスのトローリングには、かなり有効なタックルといえます。また魚がヒットした後はシステムから仕掛けを分離させた状態でのダイレクトなファイトとなることから、初心者からベテランまで、ランディング(取り込み)が非常に楽なのがよい。

 ダウンリガーシステムの場合、1つの船でどの程度の仕掛けを流せるのでしょう? 例えば漁の場合などは1ダウンリガーに2ロッドをセットしたもの×2セット用意し、それぞれを船の左右側面にセットすれば4ロッドとなり、4つのタナを同時に流します。竿を使わない仕掛け(=ダイレクトリグのこと→琵琶湖では一般の方の使用は禁止です。また実際には効果の薄い季節もあります)も使うとなると、各5セットとなり、10ヶのルアーを同時に流すことができます(もちろんガイドの時や遊漁の場合にはルールに準じた制限がありますので、人数に合わせた竿数の範囲内となります)

 ダウンリガーは手動による巻き上げと、電動タイプに大別されます。商品としてはアメリカ製の「キャノン」、カナダ製の「スコッティー」や「ウォーカー」等があります。マイボートの方には、スコッティーの電動タイプがオススメめです。製品によってはワイヤーを巻き取るスプールが縦巻きでレベルワインダーが無い為、船の進行方向の逆側にワイヤーがたまりワイヤー噛みが起こりがちです。

 現在は修理用パーツ供給の安定性などの点から、スコッティー社の製品をメインに取り扱っています。いずれもスプールが横巻きの為、ワイヤー噛みが起こりにくいというメリットもあります。とりあえずちょっとやってみたい方には、スコッティーの「1050」がオススメです。

 


※とりあえず導入してみる場合に、大まかな考え方として、1ダウンリガーに対して1ロッドと2ロッドのシステムが有りますが、1ダウンリガーで2ロッドの場合、水圧抵抗を考えウエイトは重めにします。

 


琵琶湖スタイルって?

 ビワマスは基本的に、ルアーで釣ります。岸辺に近づいてくるのは残念ながら、禁漁期となっている秋から初冬のみなので、もしキャスティングで釣りたい方はガイドサービスを利用し沖に出て、その旨をキャプテンに相談したほうが良いでしょう。ただ、回遊魚であるビワマスを広大な琵琶湖でピンポイントで狙うことは、あまりに確率が低いといえます。この点については、近年試みる方が増えてきたジギングについても同様です。琵琶湖でビワマス を狙う上では、広範囲に効率よく釣りができる “トローリング” が、やはりメインとなります。

 トローリングはルアーの数が多ければ多いほど釣れる確率が上がりますが、琵琶湖の沖でトローリングを行う際に1ボートで出せるタックルの数は、琵琶湖海区漁業調整委員会で定められたルールに従う必要があり、1人2セットまでとなります(令和5年現在)


 初めて挑戦するなら少々操船が不安定でもトラブルが少ない、1ダウンリガーに1ロッドのセットと、レッドコアライン1セットの2タックルが良いでしょう。レッドコアラインタックルで水面から水深15mまで位を狙い、手動ダウンリガータックルで水深10m~30mまでを探りますウエイトの重量は4LB~6LB=2~3kg)。小さな舟で挑戦する場合であっても、この2タックルなら可能です。


 芯に鉛のワイヤーが入り外側をダクロンまたはPE素材の糸で編みこんだ沈む糸=レッドコアラインを使用するレッドコアラインシステムの場合は、十分な長さのレッドコアラインをリールに巻き、船をゆっくり走らせ糸を長めに出して流していくことで、ルアーを深くに沈めます。竿とリールだけなので道具立てはダウンリガーに比べて簡単ですが、ラインを長く出しているので取り込みやルアーチェンジ、トローリング中の扱いが少し難しくなります。


 一方のダウンリガーシステムは一定の水深まで仕掛けを沈めるだけのウエイトと、それを上げ下げするダウンリガー(ウインチ)本体、そして竿とリールというふうに道具は多くなりますが、魚を掛けてからはウエイトと仕掛けを分離させフリーにすることが可能で、魚までの距離が短く抵抗も少ないので、楽な取り込みが出来ます。


 魚のヒットする水深が浅い場合、レッドコアラインシステムでのヒット率が高くなり、逆に深い場合はダウンリガーシステムが有利になります。レッドコアラインタックルとダウンリガータックルを併用するトローリングこそが “琵琶湖スタイル”といえるかもしれません。よってレッドコアライン1セット、ダウンリガー1セットで2ケのルアーを流していくのが琵琶湖でのトローリングの基本となり、この2セットでいろんな水深を自由にコントロールしながら流していくことが出来れば、一人前のビワマストローラーです

 ビワマスの習性として、多くの季節に水温や餌の都合で、水面から10m前後の浅い層にも大型魚が居ると推察しています。その為、スタッカー(ダウンリガーで仕掛けを複数流す場合の上側の仕掛け)の位置を浅くしたり、レッドコアラインを短く出すということをします。


 ところが浅い層ではボートと魚が近いので、警戒して魚が逃げている…… いかにしてボートからルアーを遠ざけて浅い層を流すか? 船が大型船なら、7mくらいのアウトリガーを出すのが簡単です。また、レッドコアを3色4色のみであとはモノフィラでヘッドとして流すという方法もあります。ところが旋回すると追従性が悪いので、絡みやすくなります。あちらを立てればこちらが立たず。この釣りもやはり、難しいものです……。